ツール一覧 / AI活用ノート / ChatGPTの最新モデルGPT-6 Astraは何が変わったか|3タスクで比較
ChatGPTの最新モデルGPT-6 Astraと前世代GPT-5.6の違いを、文章要約・表作成・コード修正の3タスクに絞って公式ドキュメントから整理しました。料金の実際、APIで外れた機能、自分で比較を回す手順まで。
モデル切り替えのポップアップが出て、そのまま「あとで」を押した人向けです。
先に3行だけ。文章要約と表作成が仕事の中心なら、GPT-5.6 Sol のままでも困りません。 複数ファイルにまたがるコード修正が中心なら、GPT-6 Astra を試す価値があります。ただし挙動が変わるので、既存のプロンプトは手直し前提です。 APIで使うなら、Astra は入力・出力ともに Sol の2.5倍。まず同じ仕事を3本投げて、差が出るか見てからで間に合います。
制作の現場で毎日発生する作業だからです。
ベンチマークの総合スコアは見ていません。あれは「うちの案件で速くなるか」には、あまり答えてくれないので。
まず地図から。GPT-5.6は Sol・Terra・Luna の3兄弟、その上に9月3日公開の GPT-6 Astra が乗った形です。
| GPT-6 Astra | GPT-5.6 Sol | GPT-5.6 Terra | GPT-5.6 Luna | |
|---|---|---|---|---|
| 入力(100万トークン) | $10 | $4 | $2 | $0.20 |
| キャッシュ入力 | $1 | $0.40 | $0.20 | $0.02 |
| 出力(100万トークン) | $50 | $20 | $12 | $1.20 |
| コンテキスト | 1,050,000 | 1,050,000 | 1,050,000 | 1,050,000 |
| 最大出力 | 128,000 | 128,000 | 128,000 | 128,000 |
| 知識カットオフ | 2026-04-30 | 2026-02-16 | 2026-02-16 | 2026-02-16 |
| reasoning.effort | low〜max(noneなし) |
none〜max | — | none〜max |
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いずれも2026年9月7日時点、OpenAIの開発者向け価格ページとモデルカードの表示です。価格は変わるので、最新は公式サイトで確認してください。
金額の感覚に翻訳します。日本語の議事録1本(およそ8,000字)を要約させると、入力はざっくり6,000トークン前後。 Astra なら入力側は0.06ドル、9円くらい。1日20本回して月400本でも、入力だけなら数千円のレンジです。効いてくるのは出力側で、Astra は出力$50。長い回答を延々と吐かせる使い方をすると、ここで差がつきます。
そしてここ、見落としやすい条件があります。272Kトークンを超えるプロンプトは、入力とキャッシュの単価が2倍になります(Astra のモデルカードに明記)。Luna では「272K超は入力2倍・出力1.5倍」と書かれています。100万トークン入るからといって、リポジトリをまるごと投げる運用をすると、単価テーブルが切り替わることを忘れずに。
要約タスクで気にするのは2つ。事実を捻じ曲げないことと、長すぎないこと。
事実誤りについては、公開されている数字があります。 2026年8月6日付の「GPT-5.6 – August Updates」PDFに、ハルシネーション評価の相対値が載っています。GPT-5.3 Instant を1.00倍とした比較で、GPT-5.6 Sol(8月版)の「事実誤りを含む記述の割合」は、事実性重視のプロンプト集で0.25倍、ユーザーが誤りと報告した事例で0.25倍、高リスク(医療・法務・金融)で0.18倍。OpenAI自身は「3つのプロンプト集すべてで、事実誤り率をおよそ60%削減した」と書いています。
GPT-6 Astra についてはどうか。システムカードには「Astra は GPT-5.6 Sol より事実誤りが実質的に少なく、ユーザーから報告されたハルシネーションを再現しにくい」「改善は特に低レイテンシ・低推論設定で顕著」とあります。ただし比較は図で示されており、削減幅を数字で押さえられる形にはなっていません。改善の方向ははっきりしていますが、幅は読み取れないと考えてください。
そしてOpenAI自身が但し書きを付けています。これらの評価はハルシネーションが起きやすい事例を意図的に集めたもので、実運用での誤り率そのものではない、と。手元の議事録が同じ比率で改善するとは限りません。
長さについては、要約タスクにとって地味に嬉しい変化があります。8月版 Sol の HealthBench 系評価では、スコアが上がったうえに平均回答長が短くなっています(HealthBench で1,922文字→1,514文字)。冗長さと引き換えにスコアを稼ぐ、あの挙動が少し減ったということです。
弱点も書きます。Astra の移行ガイドには「必要以上に簡潔にしたいなら、明示的に指示せよ」という趣旨の記述があり、推奨文言まで例示されています。「箇条書きではなく、1段落1論点の簡潔な段落で」「"Bottom Line:" のような決まり文句を使わない」。裏を返せば、放っておくと長く、定型句が混じるということです。
表作成について、Astra での改善を数字で示した公式資料はありません。判断材料になるのは、間接的なものだけです。
3つ目が実務的には一番大きい。「表の列だけは毎回同じにしたい」ときに temperature を0付近に落とす、という手が Astra では使えません。 出力の安定性は、パラメータではなくプロンプトとスキーマで担保する設計に寄せる必要があります。
なので表作成については、モデル選びより先にやることがあります。JSON Schema で列を定義して構造化出力で受け取り、Markdown への整形はこちら側のコードでやる。この形にしておけば、モデルが変わっても表が崩れません。逆に言うと、この設計にしていないなら、モデルを上げても表崩れは直りません。
Astra が力を入れたのは、明らかにエージェント的なコード作業です。システムカードの記述で、実務に直結しそうなのは2つ。
ひとつは、勝手に危ないことをする頻度が下がったこと。 業務環境を模したシミュレーションで、承認なしの取引のような望ましくない結果を出した割合が、GPT-5.6 Sol の18.8%に対して Astra は3.4%とされています。もうひとつは間接プロンプトインジェクション(外部コンテンツに仕込まれた指示に乗っ取られる攻撃)への耐性で、96.23%から99.79%へ。ツールにコードベースを触らせる使い方をするなら、この2つは効きます。
社内の Codex タスク5万4千件超のシミュレーションでは、重大度の高い挙動のフラグ数が Sol のおよそ半分だった、とも書かれています。
では手放しで移行できるかというと、そうでもありません。 移行ガイドに、はっきりこう書かれています。Astra は前モデルより確認を取ろうとして止まる回数が増えることがあり、その場合は「自走してよい」と明示的に指示せよ、と。1ファイルの軽微な修正を頼んだつもりが、確認の往復で終わる。これは体感でストレスになるやつです。
APIまわりの変更も、移行時に踏みます。
reasoning.effort の none が使えない。 none や minimal を使っていたなら low から始めて、以前の結果と比べ直すよう案内されています最後の監視は、安全性の観点では歓迎すべきものですが、システムカードが「相当な計算コストがかかる」と書いている以上、レイテンシと無関係ではないはずです。
なお、9月3日の changelog では長時間タスク向けに、非同期のツール呼び出し、WebSocket 経由の途中介入、キャッシュを保ったまま会話の途中で推論の強さを変える機能が追加されています。「軽い作業は low、詰まったら high」を1セッション内でやれるので、コスト設計はしやすくなります。
料金表の下にある話です。
レート制限は累計課金額で決まる段階制です。 Free と Tier 1〜5 があり、Tier 1(累計$5支払い)で月$100、Tier 5(累計$1,000)で月$200,000。Sol のモデルカードでは、ティアに応じて毎分500〜15,000リクエスト、毎分50万〜4,000万トークンと表示されています。新規アカウントで Astra を大量に叩く計画は、まずティアで詰まります。
エラーの読み分けも9月2日に整理されました。429 の slow_down は「リクエストの増やし方が急すぎる」——毎分の上限内でも出ます。503 の server_is_overloaded はモデル側の一時的な混雑。どちらも Retry-After ヘッダが付く場合があり、それに従って再試行するよう案内されています。バッチ処理を書く人は、この2つを別扱いにしておくと事故が減ります。
ロックインの話。 Assistants API は2026年8月26日でシャットダウンが完了しました。文字起こしモデルの一部も非推奨になり、2027年2月26日に停止予定と告知されています。加えて Astra は Realtime・Assistants・Fine-tuning・Embeddings に非対応で、Chat Completions と Responses のみ。Responses API 前提で組むほど、乗り換えコストは上がります。 ここは目をつぶって進むしかない部分ですが、目をつぶっている自覚は持っておきたいところです。
そして納品物に使う場合。 Astra はサイバーセキュリティ能力が Preparedness Framework の「Critical」に達した初のモデルとされ、外部展開ではミスアライメント監視や分類器による追加の安全層が入っています。つまりツールを使う推論の内容は監視対象です。クライアントのコードを扱う案件で使うなら、この事実は契約と秘密保持の観点から確認しておくべきです。判断の根拠は、推測ではなく提供元の利用規約と安全性文書に置いてください。
もうひとつ、これは書いておきます。システムカードには、Astra が自身の思考過程(CoT)を制御する能力が上がり、監視しやすさは低下したという記述があります。評価環境であることを察した割合は Sol の2.8%に対し9.6%。OpenAI 自身が「今後の世代でも同様の低下が続くなら、ミスアライメントを検出できる自信は相当に下がるだろう」と書いています。仕事で使う判断は変わらないかもしれませんが、知らずに使うのと知って使うのとでは違います。
全部で30分かかりません。
model だけ差し替えlow から。 移行ガイドの推奨どおりです。いきなり high で比べると、良くなったのがモデルなのか推論量なのか分かりません3本とも判定が変わらなかったら、いまのモデルで足りている、ということです。それが分かるだけでも回す価値はあります。
Q. ChatGPTの有料プランに入っていれば追加課金なしで Astra を使えますか。 プラン内での提供状況は変わることがあるので、ChatGPTアプリのモデル選択画面と、公式ヘルプの ChatGPT リリースノートで確認してください。API側の料金は入力$10・出力$50(100万トークンあたり、2026年9月7日時点)です。
Q. 無料枠だけで比較できますか。 ChatGPTの無料プランでも、要約と表作成の2本は試せます。ただし利用できるモデルは限られます。API経由で3本回す場合、8,000字の要約なら入力6,000トークン前後なので、Astra でも1本あたり10円前後。3本の比較のために有料プランを増やす必要はありません。
Q. 前のモデルはいつまで使えますか。 GPT-5.6 Sol のモデルカードには、少なくとも2026年11月21日までは利用可能と表示されています(同日時点)。過去には GPT-5.2 が2026年6月12日にChatGPTから、GPT-4.5 が6月26日に提供終了しており、移行期間は数か月単位と見ておくのが安全です。
Q. temperature が使えないと何が困りますか。 出力のばらつきをパラメータで抑えられません。表や JSON を安定させたいなら、構造化出力(JSON Schema)で受け取り、整形は自分のコードで行う設計にしてください。これはモデルが変わっても効きます。
Q. 「事実誤りが60%減った」なら、ファクトチェックは省けますか。 省けません。OpenAI 自身が、その評価はハルシネーションが起きやすい事例を集めたもので、実運用の誤り率ではないと明記しています。納品物に載せる固有名詞と数字は、これまでどおり自分で確認してください。
none 非対応、temperature/top_p/logprobs 非対応、ツール呼び出しは Responses API 前提次にやること: 過去案件から3本だけ素材を選んで、採点表を先に書いてください。それを作ってから切り替えると、5分で判断が付きます。