ツール一覧 / AI活用ノート / AI広告コピーは景表法・薬機法をどこで踏むか|納品前チェック
AIが書いた広告コピーには最上級表現や効果の断定が自然に混ざります。景品表示法と薬機法のどこに当たるのかを、消費者庁と厚生労働省の一次資料から整理し、納品前に通す確認の流れと、指摘されやすい語をまとめました。
AIにLPのコピーを書かせると、頼んでいないのに「業界No.1」「95%が効果を実感」「最高の仕上がり」が混ざってきます。これは事故ではなく、そう書かれた広告文を大量に読んで学習しているからです。
この記事の結論
先に結論を3行で。
上の3行と、後段の対応表・確認フローは、次の4つの基準で絞り込んでいます。順番を付けている以上、基準を先に出しておきます。
除外したものも書いておきます。法律事務所・広告代理店・まとめサイトの解説は情報源にしていません。個別の表現がセーフかアウトかの判定もしていません。景表法の「著しく」の判断は一般消費者の認識を基準に個別具体的に行われる、と消費者庁自身が書いています。ここでできるのは「止まるべき場所を示す」ところまでです。
なお後段の対応表の並び順は優先度ではなく、根拠となる法令ごとのまとまり(景表法系→薬機法系)です。
AIは「刺さるコピーを」と指示されると、訴求を強める方向に振れます。強める手段として一番安いのが、最上級(No.1、最高、業界随一)と、断定(治る、消える、確実に)と、数字つきの体験談(95%が実感)です。人間のコピーライターなら「これ根拠あるんですか」と一度止まるところを、AIは止まりません。
厄介なのは、出てくる文章が違法に見えないことです。世に出ている広告と同じ顔をしているので、レビューを素通りします。
| AIが出しがちな語 | 引っかかりうるところ | 根拠となる資料 |
|---|---|---|
| 顧客満足度No.1/売上No.1 | 景表法5条1号(優良誤認) | No.1表示実態調査報告書 第3 |
| 医師の90%が推奨/専門家の85%が支持 | 同上(報告書では「高評価%表示」) | 同 第4 |
| 利用者の95%が効果を実感 | 5条1号+不実証広告規制(7条2項) | 表示に関するQ&A |
| 最高の効き目/最強の保湿力 | 適正広告基準 第3-3(7) 最大級の表現の禁止 | 医薬品等適正広告基準 |
| 確実に改善/副作用はありません | 同 第3-3(6) 効能効果等・安全性の保証表現の禁止 | 同 |
| シミが消える/ニキビが治る | 化粧品の効能56項目の範囲外 | 平成23年7月21日通知 |
| 飲んですぐ効く/即効性 | 同 第3-3(8) 速効性・持続性の表現の範囲 | 医薬品等適正広告基準 |
| 他社製品より安全です | 同 第3-9 他社製品の誹謗の制限 | 同 |
| 〇〇学会が推奨/専門医監修 | 同 第3-10 医薬関係者等の推せん | 同 |
| 今だけ最安値/通常価格の半額 | 景表法5条2号(有利誤認) | 消費者庁 |
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医薬品等適正広告基準は厚生労働省が公開している通知(昭和55年薬発第1339号、平成14年改正版)で条文を確認しました。この基準は2017年に全部改正されており、条項番号は現行版と異なります。所管の都道府県薬務課に当たるときは番号ではなく内容で照会してください。
2024年9月26日、消費者庁表示対策課が「No.1表示に関する実態調査報告書」を公表しました。No.1表示275件と高評価%表示93件、計368件の広告を集めて分析したものです。
制作者として押さえておきたいのは、報告書のここです。
「〜したい」「〜と思う」に逃がしても外れない。 サンプリング調査では「使ってみたい〇〇No.1」「コスパが良いと思う◇◇商品」といった言い回しが多く見られました。広告主へのヒアリングでは、こう書いていれば実際の利用者に調査したことにはならない、と回答した事業者もいたそうです。ところが消費者1,000名への意識調査では、「利用したい□□サービスNo.1」を見て実際の利用者に調査していると思った人が約5割いました。報告書は、表示の内容によっては実利用者調査と受け取られる場合がある、と結論づけています。
「顧客満足度No.1」は実利用者への調査が前提。 満足したかどうかは、その商品を使ったことがある人でなければ判断できない。だからこの表示は、実利用者に調査した結果として受け取られる。イメージ調査だけを根拠にしているケースが実際に見つかった、と報告書は書いています。
小さな注記では消えない。 「サイトイメージ調査」「本ブランドの利用有無は聴取していません」といった注記の例が挙がっていますが、記載位置・文字の大きさ・色から一般消費者にとって明瞭でない場合は、表示内容と調査結果が対応しているとはいえない、とされています。ここは制作者の領域です。10pxのグレーで脚注に押し込むレイアウトを組んでいるなら、それは設計側の判断として残ります。
「医師の90%が推奨」は3方向から崩れる。 回答者が医師であることを自己申告でしか確認していない場合、医師の専門分野が対象商品の評価に対応していない場合、そして調査会社が医師に対して根拠のない情報を与えたうえで回答させていた場合。いずれも合理的な根拠とはいえない、と報告書は列挙しています。
なお報告書の脚注には、2023年6月から2024年3月にかけての措置命令13件が挙げられています。全部が主観的評価を指標としたNo.1表示で、表示内容に見合った調査が行われていなかった点が共通していました。
一般商材と化粧品で決定的に違うのは、化粧品の効能効果が列挙式だという点です。厚生労働省の通知(平成23年7月21日薬食発0721第1号)で56項目が定められていて、その範囲を超える表現はできません。55番が「歯石の沈着を防ぐ」、56番が「乾燥による小ジワを目立たなくする」です。
AIに「シミに悩む30代向けの美容液のコピーを」と投げると、ほぼ確実に「シミが消える」系の文が出ます。これは56項目のどこにも入りません。表現をやわらげて「シミが薄くなる」にしても入りません。範囲の外側にある概念だからです。
同時に、医薬品等適正広告基準がかぶさります。基準の第3-3には、効能効果等または安全性について「具体的効能効果等又は安全性を摘示して、それが確実である保証をするような表現はしないものとする」(保証表現の禁止)と、「最大級の表現又はこれに類する表現はしないものとする」(最大級表現の禁止)が並んでいます。AIが好んで出す「確実に」と「最高の」が、そのまま2つの号に対応しています。
第3-10の医薬関係者等の推せんも見落としやすいところです。医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所その他が推せん・指導しているといった広告は行わない、とされています。「専門医監修」「サロン推奨」をキービジュアルに置く構成は、ここに当たる可能性があります。
制作者が一番気にすべきなのは、条文よりこちらです。
法定義務を負っているのは事業者(広告主)です。 景品表示法22条1項に基づく「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年内閣府告示第276号)は、事業者が講ずべき措置として7項目を挙げています。
このうち3と6が、制作現場に直接効いてきます。根拠を確認するのも、確認した資料を保管するのも、広告主の義務だということです。指針は、個人事業主や中小企業では代表者が表示等を管理している場合、代表者を担当者と定めることも可能だとしています。
裏を返すと、制作者が善意でやってはいけないことが見えます。根拠資料を自分で探してきて「たぶん問題ないでしょう」と判断することです。それは指針の枠外の行為で、しかも事故が起きたときにあなたの判断として記録が残ります。
先の実態調査でも、ヒアリング対象の広告主のほとんどでNo.1表示の根拠が十分に確認されている様子はうかがわれず、調査会社から納品された調査結果レポートを適切に保管しておらず、ヒアリングを受けて改めて取得した事業者も複数いた、と報告されています。つまり広告主側も、この義務を把握しきれていないことが多い。
AI提供元の利用規約は、この責任を引き受けません。 Anthropicの消費者向け利用規約には、出力の権利をユーザーに譲渡する旨("we assign to you all of our right, title, and interest—if any—in Outputs")と並んで、出力が常に正確とは限らない旨が明記されています。原文は "Outputs may not always be accurate and may contain material inaccuracies even if they appear accurate because of their level of detail or specificity."(もっともらしく見えても重大な不正確さを含みうる)。入力とアクションについてはユーザーが責任を負う、とも書かれています。
この構造は他社でもおおむね同じです。出力は使っていいが、内容の正しさと法令適合はあなた側の問題、というのが共通の建て付けです。「AIが書いたので」は交渉材料になりません。
2024年10月1日から、制裁の側も変わっています。 消費者庁の資料によると、令和5年改正景品表示法が2024年10月1日に施行され、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰(100万円以下の罰金)が新設されました(48条)。あわせて、過去10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者への課徴金1.5倍加算(8条5項・6項)と、売上額を把握できない期間の推計規定(8条4項)も入っています。
一方で、事業者が自主的に是正措置計画を申請して認定を受ければ措置命令・課徴金納付命令の適用を受けない「確約手続」も新設されました(26条〜33条)。ただし過去10年以内に措置命令等を受けている場合や、根拠がないと認識しながらあえて表示していた場合は対象外です。
手順2は正規表現で足ります。「No.1|ナンバーワン|最高|最強|最も|確実|完全|消える|治る|即効|%|%|満足度|推奨」あたりを引っかけるだけで、AI出力の危ない箇所はほぼ拾えます。ここに時間をかける必要はありません。
時間がかかるのは手順3です。ただしこれは制作費に乗せられる工程でもあります。1案件あたり30分の照会メールで、措置命令や差し替え作業のリスクを広告主に返せる。無償で肩代わりする性質の作業ではありません。
手順5で重要なのは、「これは書けません」で止めないことです。根拠なしで成立する代替案を一緒に出す。「業界No.1の実績」を「導入◯◯社(2026年8月時点・自社調べ)」に置き換えるような作業で、これはAIが得意なところでもあります。落とすところまでを人間が決めて、代替案の量産をAIに任せる分担が現実的です。
Q. AIに「薬機法に配慮して書いて」と指示すれば済みませんか。
出力の傾向は変わりますが、確認工程の代わりにはなりません。AI提供元の規約は出力の正確性を保証しておらず、Anthropicの規約は「詳細で具体的に見えても重大な不正確さを含みうる」と明記しています。指示は下書きの品質を上げる手段であって、根拠の裏取りとは別の話です。
Q. コピーを書いたのが制作者でも、責任は広告主だけですか。
景品表示法22条1項の管理上の措置義務を負うのは事業者です。ただし措置命令等の対象が事業者だという話と、制作者が受託契約上の責任を負わないという話は別です。契約書に成果物の適法性に関する保証条項が入っていないか、納品前に確認しておくのが実務的です。
Q. 「個人の感想です」と書いておけば体験談は使えますか。
消費者庁の表示に関するQ&Aは、消費者の体験談を根拠とする場合、無作為抽出で相当数のサンプルを統計的に客観的に調査することが必要だとしています。自社従業員や購入者から送られてくる体験談は、作為的で客観性が確保されないため認められない、とも書かれています。打消し表示の追加で成立するものではありません。
Q. 化粧品の56項目はどこで確認できますか。
厚生労働省の「化粧品の効能の範囲の改正について」(平成23年7月21日薬食発0721第1号)に列挙されています。この記事のsourcesにURLを載せてあります。解説サイトの要約ではなく、通知本文を手元に置いておくと照会が速くなります。
Q. 「No.1」を使わないコピーだけ納品すれば足りますか。
No.1表示を避けるのは有効ですが、実態調査報告書は「医師の90%が推奨」のような高評価%表示についても、間接的に商品の優良性を示す表示になりうるとしています。パーセンテージと第三者評価が絡む表現は、No.1と同じ枠で見ておくほうが無難です。